Particlight業務日誌

福岡ではたらくIT、作曲、デザイン系フリーランスParticlightの業務日誌です。業務に無関係な内容が多いです。

フリーランスParticlightの業務日誌です。業務に無関係な内容が多いです。

クラフトワークのライブに見る、ホスピタリティーのないホスピタリティー

ドイツのテクノミュージシャン、クラフトワークの大阪公演コンサートに昨年行ってきた。

コンサートはとても素晴らしいものであり、また、いくつかの点で他のコンサートとは異なる部分があった。その異なる部分が僕にとって非常に心地よいものだったのでここに記してみたい。

大抵のコンサートでは、開演前にBGMを会場に流して気分を高めるものだが、クラフトワークのコンサートでは開演前のBGMがなかった。観客は自ずから発する楽しい会話や開演を待ちきれない叫びを含んだ喧噪の中で、それぞれに期待を高めながら開演を待った。

開演前には会場内に当日の注意事項が何度も放送されるものだが、それも一切なく、代わりに会場にいるスタッフが写真撮影NGなどのごく簡単な注意を口頭でおこなっていた。同様に、終演後の会場アナウンスもなかった。

公演中には、フラッシュのようにスクリーンの映像が激しく明滅し、クラブでもかくやあらんといった重低音が会場内に響き渡る。

彼らの代表曲のひとつに『放射能(Radioactivity)』という曲があり、放射能被害に遭ったり、放射能の問題を抱えている都市――チェルノブイリ、ハリスバーグ、セラフィールド、広島――の名前を曲中に入れている。福島第一原子力発電所事故以降のバージョンでは、ここに福島の地名も追加され、反原発の急先鋒である坂本龍一の手による新たな歌詞も反原発色を更に強めている。

コンサート中「フクシマ」「ホウシャノウ」「イマスグヤメロ」とボコーダーボイスが流れるたびに、会場は大いに沸いた。

www.youtube.com

翻って、これが一般的なミュージシャンのコンサートだったらどうだろう。

開演前には大ボリュームのBGMで観客の興奮を高め、定期的に開演中の注意事項を会場内にアナウンスし、スクリーン映像が激しく明滅する演出や過度な重低音は自粛され、センシティブな社会的テーマをミュージシャンが声高に叫ぶこともない。それが悪いことだとも思わないが、どこか据わりの悪さを僕は覚えてしまうのだ。この心地悪さはどこから来るのだろう?

 思うに、あれこれと世話を焼かれることで、ひとりの成熟した大人として信頼されていないように感じてしまうのではないだろうか。過ぎたるホスピタリティーはささくれのように僕たちの自尊心を傷つける。クラフトワークのコンサートは、あえてホスピタリティーを排することで、想定する観客達の心地よさを引き出すことに成功している。なにごとも過ぎたるは猶及ばざるが如しと言ったところだろうか。ごちゃごちゃうるせえ、世話焼きパッ缶ってなもんである。

そんなクラフトワークの素晴らしいコンサートだったが難点がひとつあった。物販がすぐに売り切れてしまってお目当てのTシャツが買えなかったのである。次回公演の際には、十分な在庫を持って来日して欲しい。

AudiostockでBGM・効果音を販売中!