Particlight業務日誌

福岡ではたらくIT、作曲、デザイン系フリーランスParticlightの業務日誌です。業務に無関係な内容が多いです。

フリーランスParticlightの業務日誌です。業務に無関係な内容が多いです。

あなたの人生に影響を与えた10枚

facebookで回ってきたアルバム バトン リレーの内容を転載します。

バトンの主旨を勝手に汲んで、ライブ、コンピ、リミックス、ベスト盤は除き、いわゆるオリジナルアルバムのみを選びました。
また「影響を与えた」ということなので、単純に好きだったりよく聴いたアルバムは泣く泣く除きました。あと同一ミュージシャンからの選出は一枚だけにしました。
リストアップするのに今まで聴いたアルバムを思い出し、そこから前掲のアルバムを除き…としているうちに自分でも意外なリストになりました。

紹介順は僕が人生で聴いた順です。

 

 

【1/10枚目】E.T. (オリジナル・サウンドトラック) / John Williams

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映画『E.T.』のサントラです。誕生日プレゼントとして親にカセットテープを買ってもらいました。生まれて初めて買ってもらったアルバムでもあります。
それまでは「アルバム単位」という意識もなく家にあった演歌やらクラシックやらペレス・プラードやらYMOやらを聴いてました。
当時小学校低学年だったわりには飽きずに熱心にこのアルバムを聴いていた記憶があります。単純な主題で聴かせるジョン・ウィリアムズの手腕のなせる技なのでしょう。今聴いてもまったく飽きない名曲揃いです。演奏もいいですね。ファーストチョイスとしては我ながらなかなかいい選択だったのではないでしょうか。
『E.T.』は生まれて初めて観た映画ということもあり感慨深い作品です。
いまWikipediaをみたら、『E.T. 20周年アニバーサリー特別版』なる映画が2002年に公開されていたようです。しかし評判は芳しくないようですね。観てみるべきか思い出のままにしておくべきか…。

 

 

【2/10枚目】ミュージック・フロム・イース / Falcom Sound Team jdk (1987)

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パソコンゲーム『Ys(イース)』のサントラです。
地元のデパートのパソコンコーナーで同ゲームのデモ画面を見ている時にM5『FIRST STEP TOWARDS WARS』を聴きシビれました。
サビの後半にメロディーがオクターブ上がるんですがそこがゲーム独特の音色ともあいまって最高にカッコよかったんですよね。器楽曲ならばボーカル曲と違ってこんな高い音も出せるんだな、とボンヤリと考えてました。
サントラ作曲者の古代祐三はジブリ音楽で有名な久石譲に師事した方なんですが、曲風はそんなに似てないですね。もっとも古代さんは久石譲を「弟子に曲を作らせて自分の手柄にするヤツ」みたいに言ってたのであまり好きではないようです。

なおゲームの方も家にパソコンはなかったのになぜかプレイ、クリアーしました(友達に本体ごと借りたんだったかな)。

オリジナルアルバムのみ選ぶと言っておきながら1枚目2枚目ともサントラというギリギリを攻めた感がありますが、3枚目はどうなるんでしょうか。

 

 

【3/10枚目】as close as possible / オフコース (1987)

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小田和正が在籍していたバンド、オフコース後期のアルバム。オフコースファンは前期~中期を好む人が多いけど、僕は後期派です。
このアルバムは中体連で会場まで学校の先生の車に乗せてもらった時にカーステでみんなで聴いた思い出があります。
タイトルチューンであるM1『もっと近くに (as close as possible) 』は当時放送していたクイズ番組『なるほど!ザ・ワールド』のエンディングテーマとして使用されていました。パリ・ダカールラリー(当時)の映像をバックにこの曲が流れていたためか、歌詞の最後が「All the way to you」だからなのか、この曲を聴くとなぜか高村光太郎の『道程』を連想します。実際はラブソングなんですけどね。

www.kangin.or.jp

また、小田和正には『風の坂道』という曲があり、この歌詞は僕に夏目漱石を彷彿させます。特に似てないんだけどなんでだろう。

www.utamap.com

アルバム最後のM10『嘘と噂』はキーボードを坂本龍一が担当しています。今までに聴いた中でいちばん好きな坂本龍一のプレイです(2番目はサトシ・トミイエとの連弾東風)。特にアウトロの冷静な中にも狂おしいほどの情愛がこめられてる感じがいい。デュエットしてる大貫妙子のはかないボーカルもいいですね。

昨日紹介した古代祐三と小田和正にはメロディーの美しさとオブリガートのおもしろさを学びました。小田さんの歌詞からはオトナの恋愛テクを学びました。嘘です。

 

 

【4/10枚目】humansystem / TM NETWORK (1987)

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E.T.のテーマはAMラジオからよく流れていた。オフコースの曲はFMラジオでよく聴いた(オフコースの曲はアメリカのFMチャートでランクインしたこともある)。時を並行して音楽メディアはレコードからCDへ移ろうとしていた。そんな時代にリリースされたのがこの『humansystem』、小室哲哉が結成したバンド、TM NETWORK 5枚目のアルバムです。

誰しも小学生くらいまではテレビや家族や友人の影響で音楽を聴くことが多いと思います。なので、年長のきょうだいがいるヤツは色んな音楽に触れる機会が多かったりする。僕も姉の影響で色んな音楽を聴きました。オフコースもその中のひとつです。中学生になり、自分で音楽をディグるようになって最初に好きになったのがTM NETWORKでした。TM NETWORKは当時、いわゆるオタクが聴くものみたいなイメージがあり、TMファンであるとはなかなか公言しづらい雰囲気があったように思います。イキリやヤンキーはBOØWYを聴いてましたね。僕はどっちも聴いてました。後年BOØWYのコピバンもしましたし。

今はどうなのかわかりませんが、聴いている音楽によって学内でのいわゆるスクールカーストが決定されることって間々あると思います。僕が育った田舎の中高では、カースト上位がBOØWYやブルーハーツ、中位が渡辺美里や岡村靖幸などのPATi-PATi、GB系、下位はアニソンやアイドル、声優の曲、洋楽を聴くのはクラスに3人くらい、という感じでした。当時から僕はどんなジャンルの音楽も聴いていたので、カーストのどの位置のヤツともそれなりに仲良かった記憶があります。僕の頃はバンドブームで、ギターやベースでなくめずらしいキーボードをやってたことも手伝って色んな層と交流しました。音楽好きはこういうオルタナ系ポジションだった人結構多いのではないでしょうか?

閑話休題。僕は当時CDプレイヤーを持っていなかったので、友人にポータブルCDプレイヤーを借りて同アルバムのレンタルCDをテープに録音して聴いてました。数年後、アルバイトして無事CDプレイヤーと同アルバムを買って聴いたところ、なんか音が多いな……と感じて件のカセットとCDを聴き比べたら、なんとカセットには左チャンネルの音が録音されていませんでした。CDプレイヤーとカセットデッキをつなぐケーブルがちゃんと挿さってなかったんですね。当時はこういう事態がたまにありました。このアルバムはパンしてる音が多いので改めてCDを聴いて色んな音が聴こえるようになり、得した気分になったものです。

このアルバム、泣く子も黙るバーニー・グランドマンによるマスタリングなのですが異様に音が小さい。音量を上げればもちろん大きい音で聴けるのですが、今度はスネアドラムの音がやけに大きい。80年代のポップスはみんなスネア音が大きかったけど、その中にあっても大きかった。ダイナミクスを上げるためやシンセのノイズを減らすための意図的なミックス・マスタリングらしいですがそんなこと知る由もない当時は少し不満でした。後年にリマスターCDが出て無事音が大きくなったのですが、今度は肝心の音質がなんか違う感じになってしまった。結局、リスニング環境が変わったこともあり、一周回ってやっぱりオリジナル盤がいいなとなりました。

この頃はM8『Resistance』にきかれるような16分音符のシーケンスフレーズがとにかく大好きでした。そういえば後にシンセサイザーを手に入れて初めて打ち込みした曲は『Resistance』でした。人間が手では弾けないフレーズを演奏できる、人間が演奏できなくても機械が演奏してくれる、そういう点に可能性を感じていましたね。

当時の日本の音楽シーンは、和製フォークからニューミュージックを経て、現代のJ-Popに通じるポップスの原型が形作られてきている頃でした。YMOを嚆矢とした日本のポップスへのシンセサイザー導入は、今では信じられないですが結構非難されるものでした。松山千春などは、シンセサイザーやシーケンサーには人間の情感がこもらないから音楽じゃないというような発言をしていました。今ではどうでしょう。松山千春もシンセやシーケンサーを使い、デジタルレコーディングされたボーカルはオートチューンでピッチをデジタル補正し……となっています。死者への冒涜だ(山下達郎もそう言っていた)とかグロテスクだとか非難される声も多いAI美空ひばりが、未来には当たり前の世界になるのかも知れません。

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TM NETWORKからは、シーケンサー、シンセサイザー、サンプリングはもちろん、コーラスワークも学ぶところが多かったです。M4『Human System』の後半とか5声くらい重ねてて、厚いコーラスってかっこいいなぁと思ってました。あと転調ですね。TMお約束のサビ半音上げ。あの高揚感はなかなか得がたいものがあります。忘れていけないのが小室みつ子による歌詞です。体制やシステムへの反抗がTMに通底するテーマのひとつとしてあったと思うのですが、このテーマの提示の仕方が尾崎豊よりも小室みつ子の方が共感できました。尾崎が鳥かごの中からの孤独な叫びならば、小室みつ子は、金網の向こう側に広がる青空を鈍色の世界から僕らが金網越しに見つめている感じ。

 

 

【5/10枚目】Symphonic Suite AKIRA / 芸能山城組 (1988)

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(Spotifyにはなぜか1曲だけありました)

はい、またサントラです。どんだけサントラ好きやねんと言われそうですが、観てない映画のサントラはもちろん、未公開映画のサントラも聴きます。映画のサントラってコンセプト・アルバムっぽいですよね。夢は映画のサントラを制作することです。

東京オリンピックの開催やCOVID-19の流行を予言したと最近巷間の一部で話題になったアニメーション映画『AKIRA』の実質的サウンドトラックが本作だ。
エスニック・ミクスチャーともいえる内容は、ガムラン、ケチャ、和太鼓、日本民謡、唱名(しょうみょう)、パイプオルガンなどの楽器や奏法を駆使して比類なきサウンドが繰り広げられる。そうきくと何やら実験音楽のようなわかりにくく退屈なサウンドかと想像するが、アクが強くカオティックな割には意外と聴きやすい。
攻殻機動隊のサントラで知られる、日本民謡とブルガリアンボイスを組み合わせて数々の名曲を世に送り出してきた川井憲次と芸能山城組のコラボレーションを一度聴いてみたい。

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本作のリリースから数年後、日本にワールドミュージックのブームが訪れ、僕はDeep Forest、Enigma、ユッスー・ンドゥールなどを好んで聴いた。中でも姫神は父の故郷にほど近い姫神山ゆかりのミュージシャンであることから思い入れもあった(幼少期に父の実家でレコードを聴いた記憶がある)。特に『神々の詩』がリズム隊も華やかで繰り返し聴いたものだ。そういえばこの曲も日本民謡歌手によるブルガリアンボイスが使われている。

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同じ頃、世界中の音楽をコラージュし、新たな音楽を模索するひとりのミュージシャンがいた。彼の名は、坂本龍一。

 

 

 

【6/10枚目】Beauty / 坂本龍一 (1989)

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(SpotifyになかったのでYouTubeのリスト)

かつて小室哲哉は「僕のアイドルはキース・エマーソンとジョン・ロード」と言っていた。その言に倣えば僕の場合「僕のアイドルは小室哲哉と坂本龍一」となる。というか、僕と同世代のキーボーディスト/DTMerなら少なからず両氏に影響を受けているだろう。

さて、「優れたアルバム」というお題なら坂本作品からはアヴァンギャルドな『B-2UNIT』や、全人類聴いとけな『async』を選びたいところだが「影響を与えた」とのことなので、ポップで多様な音楽性に溢れ、馴染み深く、学ぶところが多かった本作『Beauty』を選んだ。

本作はオリジナル・アルバムではあるのだが、沖縄民謡、ストーンズのWe Love You、バーバーのアダージョなど、実のところその半数近くはカバー曲となっている。本作を聴いた当時はそれらの原曲を知らなかったので、どれも坂本オリジナルの曲と思っていたが、それくらい、原曲は坂本流に解釈再構成され、アルバムとしての統一感が保たれている。また、セネガルや沖縄、スパニッシュのアレンジが施されているため本アルバムには真夏の似合う曲が多いのだが、録音時期に昭和天皇崩御や坂本が全幅の信頼を置いていたマネージャーの死などが重なったためなのか、不思議な静けさと透明感もある。ギラつく太陽のようなM5『Amore』は、後年のピアノアレンジでは一転して涼しげなそよ風を我々に届けてくれるし、M11『Adagio』は澄み切った泉の底のようにクリスタルな佇まいを見せている。

DTMerとしてこのアルバムの曲をどれかコピーしようと当時試みたのだが、むずかしくて断念した。坂本はコピーのむずかしい曲が多いのだが、『Love and Hate(UK Single Mix)』 は耳コピもしやすく、歌いやすく、上モノをサンプリングすれば楽にトラックを似せられた。

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音楽のみならず、坂本には思想も多くを学んだ。本作が発売された当時はニューアカの残り香のする頃で、坂本が書籍の中でよく名前を出していたデリダやらレヴィ=ストロースやらトフラーやらまだ生きてるんかと毎年驚かれるチョムスキー

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やらをイキって読んだが、青土社の本は高いということ以外1ミリも覚えていない。千のプラトーが生成文法でアウフヘーベンがワイズ・スペンディングで東京ロックダウンである。坂本龍一と村上龍の鼎談集『EV. café 超進化論』は特に好きでよく読んでいたが、栗本慎一郎ってけっこういいこと言うのにその後名前をあまり聞かないなーくらいでこれも1ミリも覚えていない。 坂本から多くを学んだと書いたが何も学んでいないことがわかってしまった。まあ坂本にも現代音楽家クセナキスの真似をして数学理論の応用から作曲しようとしたけど数学が出来なくてあきらめたというかわいいエピソードがあるのでよろしいのではないでしょうか。昨今のCOVID-19やBLM問題などで坂本も活発な発言をしている昨今、ミュージシャンが政治的、思想的発言をするのはよくないのではないかという論争が国内にあるが、良くも悪くもアナーキストな坂本のフォロワーとしてはもう何十年も前から作品と作家をわけて考える習慣が身についているのでそんなにナイーブでどうするという感じである。

坂本龍一のCDは出るたびに買っているが、10万円のレコードセットはさすがに買えないのでした。

shop.mu-mo.net

 

 

【7/10枚目】ARTISAN / 山下達郎 (1991)

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(SpotifyになかったのでYouTubeのリンク)

タツローのアルバムを初めて聴いたのは『JOY』(1989)、中学生の頃でした。1曲目『ラスト・ステップ』の超ロングトーンボーカルにやられ、続く『SPARKLE』イントロのカッティングにやられ…と、カセットがすり切れるほど聴きました。このアルバムでは『蒼氓』と『The War Song』が特に好きです。

今はどうなのかわかりませんが、自分の好きなミュージシャンを見つけたらそのルーツのミュージシャンを当たり、さらにそのルーツを当たり…というディグが僕らの頃の音楽好きには習性のひとつとしてありました。僕の場合、タツロー→大瀧詠一→Phil Spectorとウォール・オブ・サウンド系つながりで掘っていったワケですが、Phil SpectorにはThe Beatlesを掘ってきてアルバム『Let It Be』のプロデューサーである所で流れが合流した経緯があります。掘った経験のある人ならわかると思うんですが、この合流する瞬間ってすげーワクワクするんですよね。Phil Spectorプロデュースの『Let It Be』は、ロックバンド「でもある」The Beatlesにしてはその過剰なコーラスやオーケストラのオーバーダブが邪魔だ、こんなんロックじゃねぇぜとパンクキッズやロック中年に評価されたこともあり、後年、バンドサウンドのみで構成された『Let It Be... Naked』というダサい名前でダサいジャケットのアルバムが出されるまでに至ったのですが、ワタクシに言わせればアレがいいのである。あのゆったりとした間奏のストリングスなくして『The Long And Winding Road』と言えようか。

で、『ARTISAN』の話です。

山下達郎の『ARTISAN』1991年のリリース、オリコンチャート最高1位、また、第33回日本レコード大賞ポップス・ロック部門のアルバム大賞を受賞しております(サンデー・ソングブック風に)。
ベスト盤でもないのにベスト盤のような重鎮感。後年Pro Toolsでの音質、音場の変化にタツローが苦しめられる前のソニー機器でのデジタルレコーディング使用期にあって打ち込みもほどよくブレンドされた、全曲ハズレなしのタツローアルバムの中にあってなおハズレなしの名盤です。

M1『アトムの子』。ライブ盤を出す出す言って30年くらいいまだに出さない、自分のラジオ番組でかける曲はあらかじめ自分でラジオ向けにマスタリングし直してからかけるくらい音にこだわるタツローにあって10日ほどという短期間で作った手塚治虫へのトリビュート・ソング、超ゴキゲンサウンドです。ぜひ超絶爆音で聴いていただきたい。このチャイナ・シンバルの音がまたアガるんだ。この曲は、ずっと同じリズムとベースラインでサビ(の一部)だけベース音が変化する点で僕の中では坂本龍一の『美貌の青空』と同じカテゴリーに入っています。

続くM2『さよなら夏の日』はⅠ-Ⅵm-Ⅱm7-ⅣM7-Ⅴのトニック-サブドミナント-ドミナントのまっすぐピュアなサビ進行とタツローの割にはベタな後半の転調がまたグッと来るんだ。ああ、エレピやベルの音もいいですね。

M3『ターナーの汽罐車 -Turner's Steamroller-』。この曲が好きすぎて数年前に京都のターナー展を観に行きました。

M10『Endless Game』は、TBSドラマ『誘惑』の主題歌。ドラマの原作は、ナベジュン先生の『失楽園』と同様にオッサンのファンタジーであるミステリアスな若い女性との不倫を扱った『飾り火』(連城三紀彦)で、タツローはこれを読んでから作詞に取り組んだためそのような内容の歌詞になっています。また、タツローには『Forever Mine』という曲がありまして(映画『東京タワー』主題歌)、普段、自曲の歌詞に対してその内容や解釈は聴き手に委ねるとしているタツローには珍しく『Forever Mine』は「不倫の歌」であると明言しているのですが、そうとは知らずにこれを結婚披露宴でかけたのはワタシです(数年後に不倫の歌だと知った)。無難にタツロー公式結婚ソング『Your Eyes』にしとくんだった…。まぁ披露宴でQueenの『Bohemian Rhapsody』を流す猛者もいるらしいから多少はね? 『Endless Game』の聴き所のひとつは間奏のピアノのグリッサンド。これはいつ聴いてもゾクゾクする。マイベストグリッサンドです。余談ですが、個人的には1曲中に何回もピアノでグリッサンドするのはプレイヤーとしてあまりセンスがない、逆にオルガンはいかに曲中にどれだけグリスを入れ込めるかがプレイヤーのセンスだと思っております。

前回までに登場した小田和正、坂本龍一と同じく人間国宝級のタツローなのに、フォロワーがポセイドン石川やジャンク・フジヤマなど心なしかイロモノっぽいミュージシャンしかいないのが気がかりです。テクノロジーの発達と共に国産ウォール・オブ・サウンドのともしびは潰えてしまうのでしょうか。

タツローといえば60sや70sサウンド好きで有名ですが、村上春樹と音楽の趣味がだいぶ似ているので、ふたりにはぜひラジオで共演してもらいたい。両者ともいわゆる日本的なコブシがきらいな点も共通していますね。あと小田和正が毎年やっているテレビ番組『クリスマスの約束』、あれは半分タツローを呼ぶための番組のようなものなので、どっちかが死ぬ前にぜひ出演、共演していただきたい。

それでは、『あなたの人生に影響を与えた10枚』、次回もセイム・タイム、セイム・チャンネルで。みなさんごきげんよう、さようなら。

 

 

 

【8/10枚目】Dig Your Own Hole / The Chemical Brothers (1997)

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イギリスのエレクトロニック・ミュージック・デュオ、The Chemical Brothers(以下Chems) 2枚目のアルバム『Dig Your Own Hole』、全英チャート最高位1位、ビルボードチャート最高位14位の作品です。

経験上、DTMerは電子音楽を好きな傾向にあるように感じる。DTMで生音を扱うのはむずかしいし、シンセサイザーの音が好きなのでDTMを始める人も少なくないだろう。そんなDTMerが辿りつく先のひとつとして、ダンス・ミュージック――大きくくくればEDMといえるだろう――に傾倒するDTMerも多いと思う。僕もそのひとりだ。家にあったYMOのレコードで電子音楽に目覚め(もっとも子どもはピコピコ音を好みがちだと思う)、TM Networkで打ち込みを知り……と、電子音楽を聴きすぎたせいで初めての作曲、アレンジもそれほど迷いなくこなしたくらいだ(既存曲に激似なのはいうまでもない)。冨田勲もKraftwerkもStockhausenもMerzbowも聴いたしジュリアナにも再生YMOライブにも行った。世の電子音楽は大抵聴いただろうと思っていたところに本作が登場し、ド田舎の青年だった僕はおったまげた。そんなに低音出していいの? そんなにシンセビョンビョンしていいの? そんなにサンプリングを切り刻んでいいの? その……その音どうやって作ったの? と、それまでに自分がなんとなく培ってきた音楽のセオリーのようなものをものの見事にChemsは打ち砕いてくれたのだ。

本作はビッグビートやブレイクビーツと呼ばれる音楽ジャンルに属しており、とにかくダンス・ミュージックとして人を踊らせる目的に特化している。余談だが、人を踊らせるための音楽のひとつの極北がFLR(ケン・イシイ)の『Easy Filters』だと僕は思っている。

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本作がリリースされた時期の国内はいわゆるTKブームであり、これもダンス・ミュージックを基調とする楽曲が多かった。小室哲哉が作曲した安室奈美恵の『How to be a Girl』

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はChemsを意識して制作されており、雑誌『ロッキング・オン』の編集者がChemsのふたりに聴かせたところ好感触だったらしいが、DJツアーで来日していたChemsが宿泊するホテルの部屋におじゃまして自分の曲を聴いてもらおうとしたら間違えてUnderworldのBorn Slippyを聴かせてしまった僕にも笑顔で応えてくれたエドなので、たぶん大抵のことは好感触に受け取ってくれるんだと思う。

本作ではM5『Setting Sun』が僕はとにかく好きでよく聴いていた。同曲はいくつかのバージョンがあるが、このアルバム・バージョンがいちばんカッコイイと思う。当時の僕はOasisも好きでカバーしていたので、ボーカルがノエル・ギャラガーの本曲は一粒で二度おいしかった。なお、本作はYouTube Musicにもあるがこちらは『Setting Sun』がRadio Editになっているので非常に納得がいかない。

M11『The Private Psychedelic Reel』これもよく聴いた。とにかくブチ上がる。The Beatlesに、暗闇に白く浮かび上がる千のカモメが舞い飛ぶ彼岸と此岸の境界のような『Tomorrow Never Knows』という、ループミュージックの元祖とも言うべきワンコード・ワンループの楽曲があり、これが『The Private Psychedelic Reel』に似ている。

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というか『The Private Psychedelic Reel』は『Tomorrow Never Knows』のオマージュだと思う。『Tomorrow Never Knows』はChemのDJセットによく使われるくらいだし。さしずめインターネット時代の『Tomorrow Never Knows』といったところか。

“恐れることはない。とにかく「盗め」。世界はそれを手当たり次第にサンプリングし、ずたずたにカットアップし、飽くことなくリミックスするために転がっている素材のようなものだ“と椹木野衣が『シミュレーショニズム』冒頭で宣言したように、本作のリリース当時はヒップホップ、ハウス、テクノミュージックのサンプリングによる作曲手法が定着してきた頃だった。DATAFILEシリーズのサンプリングCDからDavid Bowieまで貪欲にサンプリングしReCycle!で切り刻み、新たなビートを作り出してきたChems。その血脈は、確実に僕に受け継がれている。

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ところで『Dig Your Own Hole』のジャケットってトムの横顔なの? それともシングル『Setting Sun』のジャケットの女の子?

 

 

【9/10枚目】E2-E4 / Manuel Göttsching (1984)

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アルバム1枚に収録されているのはタイトル曲の1曲のみ。58分40秒あるこの曲はワンループ・ツーコードで変化らしい変化もなく延々と淡々と続いていくだけなのに、退屈な繰り返しの日々に倦んでいる聴き手である僕たちを飽きさせることもなく、時にはじんわりとした熱狂さえ生じさせるほどのエネルギーを秘めている。

これはテクノ? アンビエント? ニューエイジ? クラウトロック? エクスペリメンタル・ミュージック? 本曲はどれにも当てはまりつつどのジャンルの重力にも墜ちていかない強さを持ちながら宇宙空間をただたゆたう。あるいはパール兄弟が『君にマニョマニョ』をリリースしたときに「マニョマニョとはどんな意味か?」と問われたサエキけんぞうが「ゼリーのようなイルカのおなかの中にいるような」といみじくも答えた感覚に通じるフニャフニャ加減で僕たちを包み込む。

ループミュージック界の偉大なるオスティナートにはRavelのBoléroがある。

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Boléroの最初から最後まで続くリズムはRavelの父親が勤務していた工場で聞こえる機械の音に触発されて作られたとする説もあるように、ループミュージックは機械的だ。また、Boléroの初演時にある女性は「Ravelは気が狂っている」と叫んでいたという。この話を聞いたRavelは、彼女はこの作品を理解していたと言ったといわれているように、ループミュージックは偏執的な異常性を孕んでいる。宿命的に機械的で偏執的――まさにテクノ・ミュージックの定義そのもの――だが、RavelをしてBoléroは冗談で作った音楽だと言わしめている(もっとも、初演は成功しているらしい)。Ravelがどういう意図でそのような発言をしたのかはわからないが、お笑いの技芸のひとつに「天丼」があるように、ウォーホルが同一作品内でモティーフを何度も繰り返したように、反復は芸術において高揚をもたらす重要なファクターである。それだけ僕たちのプリミティブな欲望に根ざしている動態である反復をRavelが特殊なものと捉えていたのは間違いないだろう。

本作やたとえばRicardo Villalobos『Fizheuer Zieheuer』

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やHerbie Hancock『Chameleon』

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などのようなループ・ミュージック全般にいえるのだが、すんなりと最後まで聴き通せる時と、どうにも不快になってしまい途中で止めてしまう場合が僕にはある。長くてともすれば単調なこれらの曲はBGMに適しているといわれることも多いが、僕に限ってはどうしても流し聞きできずにリスニングの対象になってしまう。そのため、聴くにはそれなりの時間を要する本作は、影響を与えた10枚という割にはそれほど聴き込んではいない。

ところで、Perfume『Speed Of Sound』はE2-E4のオマージュ?

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【10/10枚目】Philosophy of the World / The Shaggs(1969)

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さて最後は、NirvanaのKurt Cobainや星野源もフェイバリットに挙げているThe Shaggsの1stを選びます。聴いたことのない人はまず以下のリンクから曲を聴いてみてください。

My Pal Foot Foot - The Shaggs - YouTube

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頭がフットーしそうだよおっっ

リズムがもたついてるとかギターの粒立ちがとかそういうレベルでなく学芸会以下の演奏です。The ShaggsのメンバーであるWiggin三姉妹はほぼ演奏未経験で、もちろん作詞作曲もしたことがなかった。そんな姉妹に、Jackson 5などのファミリーグループに影響された厳格な父親がやらせたのがこのバンドの成り立ちです。たぶん『ABC』あたりを聴いた父親が「よっしゃ、これからはこれや!」(なぜか関西弁)ってノリで始めたのでしょう。風間三姉妹よりかわいそうな三姉妹です。

演奏もさることながら歌詞にも注目です。

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My pal's name is Foot Foot (Foot Foot)
He always likes to roam
My pal's name is Foot Foot (Foot Foot)
I never find him home

I go to his house
Knock at his door
People come out and say
Foot Foot don't live here no more

My pal Foot Foot (Foot Foot)
Always likes to roam
My pal Foot Foot (Foot Foot)
Now he has no home
---

どうでしょう、Peter, Paul and Maryの『Puff, the Magic Dragon』にも匹敵するストーリーテリングとイノセントな泣きの歌詞。

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子供の書いた作文と切って捨てるにはあまりに素晴らしい出来です。

そしてThe Shaggs最大の特長がそのグルーブ。聴きこむうちにクセになってきます。これは凡人にはなかなか出せない、真似しようとしてもできない、ともすればツェッペリンよりいいグルーブです。レコーディングではクリックに合わせて演奏し、ライブでもイヤモニなしてはちゃんと演奏できない現代の自称アーティストたちには永遠に到達不可能な高みでしょう。Higher Than The Sunであります。

僕の中ではDaniel JohnstonやSUPER JUNKEY MONKEYらと同カテゴリーに位置するThe Shaggs。彼女らのようなバンドはもう現れないのでしょうか?

それがいるんです。しかも日本に。

その名もLOOP H☆R。まずは聴いてみてください。

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これ、単純にヘタクソだと思うじゃないですか。でもMVを見るとしっかり再現してるんですよ。

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つまりこれが楽曲の完成形だということです。これはプログレ? パンク? スカムロック? ラップ? いや、これはLOOP H☆Rのふたりにしか演奏できない唯一無二の音楽です。

今僕のイチオシなバンドのLOOP H☆R、YouTubeチャンネルもあるので興味のある方は登録してみてください。曲だけでなく、彼らのバイオグラフィーもなかなかにすごいです。

The ShaggsやLOOP H☆Rは、一聴するとあまりに既存の音楽とかけ離れているので聴くのを拒否してしまいがちですが、そこを乗り越えるとクセになってきて、気がつくともう一度聴きたくなってる自分がいます。ラーメン二郎と同じですね。そして、音楽とは、心を打つ芸術とは一体なんなのかという深淵に我々は一歩また一歩と近づいて行くのです。

ROMが文化を滅ぼす

リチャード・ストールマンだったか誰かが来日講演した際、講演中の(他の聴講者たちの前での)質問タイムには誰も質問しないのに、講演終了後には列をなして質問しに来るのに腹を立てたという話をどこかで目にしたことがある。

いわく、講演中に質問をすればそのフィードバックは講演の参加者全員になされるが、講演後であればフィードバックは質問した当事者にしかなされない。同じことをしてフィードバックを最大化するのはITの最大の特長であり特権である。コンピューターサイエンスの権威が気にするのはもっともである。

この、人前で質問するのが恥ずかしいという感覚は日本に多い傾向だという。私も恥ずかしいタチなのでよくわかる。

似たようなものにインターネットでの『ROM』がある。ROMとは、Read Only Memberの頭字語(アクロニム)で、主にネット上で発言をせずに他の人の発言を読むだけの人のことを指す。

ROMの多いコミュニティーは厄介である。問題のある発言をする人が多いコミュニティーも厄介だが、そういう場合は最悪問題のあるメンバーを出入り禁止にすれば(直接的には)いい話だが、ROMはそうもいかない。ROM禁止なんてフレーズを掲げていたウェブサイトを1990年代や2000年代にはたまに見かけたが、あれも効力があるものではないので実際に問題を解決することはないし、そもそもROMは別に積極的に悪いことではないので規制するのもいささか変な話である。

しかし、発信を続けている側から見れば、ROMに対する心証が悪いのは確かである。ずっとROMばかりされていると、自分はコンテンツ生成機じゃないっつーのという感覚に襲われ、やる瀬なくなることがある。ブログのように情報の発信を主とするコンテンツならそのような感覚にはならないが、チャットルームやSNSのように誰でも気軽に書き込めるコンテンツなどではROMが多いと切なくなることも多いであろう。

これに近い話で、pixivの投稿をいつも待っているような自分の好きな絵師がいたけれど、その絵師が誰からも感想を得られなかったためにモチベーションが下がり、活動をやめてしまったなんて話も聞く。これもROMの悪い例と言えよう。後から残念がっても遅いのである。

やはり拙くてもいいからまずは発信するのが大事であり、自分の発言がノイズになるとかいう心配はそのあとにした方がよさそうである。『巨人の肩に乗る』のが文化発展の基本であるように。

 

 

99人の壁化するウェブ

フジテレビに『99人の壁』という人気クイズ番組がある。

www.fujitv.co.jp

1人の挑戦者が自分の得意ジャンルのクイズに挑み、同じ問題を99人も答えるという内容だ。挑戦者は99人より速く正確に答えなければ勝ちにならない。いかに自分の得意なジャンルの問題が出題されるとは言え99人と対決するのはなかなかむずかしいらしく、5回99人に勝利することで得られる賞金を手にした者はとても少ない。

 

ひとりの挑戦者に対して大勢がブロックするというこの構図、どこかで観たことがあると思ったら、最近のSNSを主とするウェブの構図に似ている。

 

誰かが何かを書いたらその他大勢がその事実関係をチェックし、間違えているとやり玉に挙げられる。事実を間違えていて指摘されるならまだしも、枝葉末節をあげつらわれることも少なくない。

 

また、指摘する側が基本負け知らずなのでますます増長し、標的を探し求める。

 

この状況が続くことで、最初に意見する者は萎縮し、その数を減らす。あるいは萎縮することのない――悪い言葉を使えば無思慮な――者の意見が増えていく。

 

思慮深いファーストペンギンがいなくなった後のウェブは刹那的な内容に溢れたものになるだろう。ウェブ上のナレッジはストック型が多い方が有益だと思うが、99人の壁化がすすめばフロー型の情報ばかりがますます増大していくばかりだろう。それは好ましくない状況だと個人的には思う。

HHKBの静音化をした その2

前回はOリングを入れて静音化した。今回はシリコンスプレーの塗布と防振マットの装着である。

といっても特に大したことはしていない。キートップを外して、露出した軸にシリコンスプレーを塗布するだけである。僕の場合、シリコンスプレーをキムワイプに吹きつけてから軸の周りを拭くように塗布した。綿棒も用意したけど使わなかった。

効果のほどは、多少は軸とキートップの擦過音が減ったかな、といった感じである。

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防振マットについては、Amazonにそれ専用のマットが売られていたので買ってみた。打鍵感が高級になった気がする。

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07BMWGZWM/

 

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こういう厚さ2~3mmのマット

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裏はシールになってるんだけど、べったりシールをつけるのがイヤだったので僕は小さいシールで接着した。

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ついてにキートップも変えてみた。右ShiftをCtrlに変更してるので、左Ctrlと同じく赤にした。

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00HC2W0FC/

HHKBの静音化をした

先日購入したHappy Haking Keyboard(HHKB)だが、打鍵音がプラスチックな感じで少し気になるので、静音化してみた。

静音化作業内容自体はネットに色々アップされているので、下記サイトなどを参考にしていただきたい。

catcherweb.com

作業場気をつけなければいけない点はふたつ。

ひとつは、基板を取り外す際に基板を上下逆の状態で取り外さないこと。僕はこれをやってラバーカップがいくつかずれてしまった。

もうひとつは、Oリングを取り付けて、キーボードを元に組み上げる前に、試し打ちをしておかしな部分がないかちゃんと確認すること。僕はエンターキーが正しく打鍵できない状態のまま、まーいけるだろと組み付けて、動作確認してみたら正しく動作せず、結局また分解して組み立て直す羽目になった。

 

苦労の甲斐あって、改造後はとても静かになったし、安っぽい打鍵音が高級な感じになった。次はシリコンスプレー塗布と、防振マット取り付けをしてみよう。

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https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07BMWGZWM/

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